転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
 さっきまで冷静だったフィデル様が、エリオットの元婚約者と言った途端に感情的になっているのがわかる。やはり、エリオットと軋轢が生じていることは間違いないようだ。
 ここまできたんだ。なんとしても、フィデル様とは手を組みたい。でも、フィデル様は私がエリオットの差し金なんじゃないかと警戒している。

「私は、フィデル様……あなたの力を借りたくて、自らあなたに会いに、ここまでやってきました」

 その警戒を解くため、まわりくどい言い方はせずきっぱりと告げる。

「自ら? 俺がここにいることを知ってるのは、城のごく僅かの人間だけだ」
「おっしゃる通り。でも私は、フィデル様がここにいることを、誰にも聞かず知ることができた。なぜなら私は、あなたと同じ異能を持っている人間だから」
「……なんだと?」

 フィデル様の眉がピクリと動く。
「私の能力は、今、誰がどこでなにをしているかがわかる〝千里眼〟。私はこの目を使って、あなたがどこにいるかを探し当てた。その後は……ドリスさんとニールに頼み込んで、協力してもらいました。私が今別邸にいることは、このふたり以外には知られていません」
「〝千里眼〟か……。なるほど。にわかに信じがたいが、お前が嘘をついているようには見えない。それに、異能の存在を、俺は否定できないからな」

 思ったよりも、フィデル様は私の話をあっさりと受け入れた。それはきっと、フィデル様が私と同じだから。

「あなたも異能者なのでしょう? ごめんなさい。この話は、以前エリオットと陛下が話しているのを聞いてしまって……」
「別にいい。隠しているわけではないし、知っている奴は知っている話だ。お前の言う通り、俺は〝予知能力〟が使える異能者だ」
「〝予知能力〟……」

 やはり、話は本当だったみたいだ。言葉の通り、未来がわかる、ということだろうか。私の能力より、ずっとすごい気がする。

「でも、俺の能力は完璧じゃない。見れる未来を選ぶことはできないし、自分の身近で起きることしか見えない。その未来がいつ起きるか特定することも不可能だが……一週間以内には必ず起きる」
「じゃあ、とにかく能力を使えば、身近で起きる未来がなにかしら見える、ということですね」
「そういうことだ。大したことがなくて、がっかりしただろう」
「そんなこと! 私の能力も、全然完璧じゃないですし。まったく知らないものは見れないし、何度も使えないし、瞬きした瞬間消えちゃうし……」

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