転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
 社交的で、人を笑顔にさせるのがうまい兄への憧れはあった。でも、俺はどう頑張ってもああいう“太陽”のような人間にはなれない。性格上、幼いながらそれを悟っていた。

 かわりに俺は、力を使って人を助け、笑顔にできたらいいなと思った。実際、俺は危険な場面を予知で見ると、すぐさま両親に報告し、その場面を回避するなどして、身近な人々を助けることに貢献していた。

 父は大々的に、俺が異能者であることを世間に発表し、国の役に立てようと考えたが、母はそれを嫌がった。世間に知られてしまえば、絶対に力を狙う人間が現れ、俺が危険な目に遭うと思ったようだ。

 結局、知っているのはごくわずかの関係者のみにして、もう少し俺が大人になったときに世間に知らせるということで話は落ち着いた。

「またフィデルのおかげで、ひとつ問題が解決したわね」

 母は俺の予知が人の役に立つと、優しい笑顔で俺の頭を撫でてくれた。
 この頃は、自分が見たものは必ず三日以内に起きていたので、俺が自分の力をそういうふうに理解してしまっていた。それがこの後、最悪な事態を招いてしまうことも知らずに。

「……っ!?」

 ある日の夜。俺は母親が階段から落ちて死んでいる予知を見て飛び起きた。心臓がバクバクして、びっしょりと汗をかいている。
 無性に怖くなり、俺は少し離れた二階にある兄の部屋まで走った。寝ている兄を叩き起こし、俺は自分が見た予知の内容を兄に告げ泣きついた。

「フィデル、本当に見たのか? 見間違いじゃなくて?」
「うん……。あれは、お母様だった」
「こんな真夜中だ。きっと夢と予知を間違えただけだ。お前が見たのはただの悪夢。わかったか?」
「で、でも! もし予知だったら、お母様が……」
「そのときは母様を助ければいいだけだろ。いつもやってる、回避?ってやつで。……眠いから、早く出て行ってくれよ」
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