転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
「ご、ごめんなさい。つい……」
「別に無理に敬語を使わなくてもいい。様もいらない。フィデルでいい。……お前、丁寧に話すの苦手だろ? 無理しているのが伝わってくる」
「え!? バレてた? どうも息苦しくって。じゃあお言葉に甘えて、これからはこのスタンスでいくわ!」
急に生き生きと話し出す私を見て、フィデル様は呆れたようにため息をつく。敬語が苦手というよりは、敬語を使っている相手とは距離を詰めづらいというのが、私の中にあったのだ。
「さっきの質問の答えだが」
「うん?」
「恨んでどうする。俺が迫りくる現実から逃げず、きちんと気にかけていれば、母はきっと死なずにすんだ。理由はどうあれ、俺のせいであることは間違ってはいない」
「あなたは自分の予知が一週間猶予があることを、そのときは知らなかったじゃない。それに、きちんと王妃様にもエリオットにも報告していた。王妃様が死んだのはあなたのせいじゃないの」
フィデルの言いたいこともわかる。きっと、今までも事件後は〝母親殺しの犯人〟として扱われてきたのだろう。誰もそれを否定する人がいなかったのなら、私が否定してやる。
「……受け入れて、おとなしく暮らせばいいだけだ」
「どうして、今の生活を肯定するようなことが言えるの? 息苦しさを感じない?」
「逆だな。父や兄といるほうが、俺は常に息苦しさを感じていた。ここは自由だ。ひとりで好きなことを好きなだけしていられる」
「自由……? あなたは自由なようで、ちっとも自由じゃないわ。この小さな世界で、同じ毎日を繰り返しているだけ。同じ景色を見ながら、同じことをして、一日が終わるのを待つだけ。……行動を制限された生活は、自由とはいわない」
何年も、この部屋の中だけで暮らすなんて――自由からは程遠い毎日を過ごしながら、フィデルはそれをわかっていない。
現に、私が入ってきたときにフィデルが読んでいた本は、ボロボロでページが擦り切れていた。きっと、もう何度も同じ本を読んでいるのだろう。
「笑ったり、泣いたり、怒ったり……。人生ってそういうものの繰り返しよ。あなた、最近ひとつでもしたことある?」
「……ないな」
口をつぐんでいたフィデルが、ぼそっと呟く。
「別に無理に敬語を使わなくてもいい。様もいらない。フィデルでいい。……お前、丁寧に話すの苦手だろ? 無理しているのが伝わってくる」
「え!? バレてた? どうも息苦しくって。じゃあお言葉に甘えて、これからはこのスタンスでいくわ!」
急に生き生きと話し出す私を見て、フィデル様は呆れたようにため息をつく。敬語が苦手というよりは、敬語を使っている相手とは距離を詰めづらいというのが、私の中にあったのだ。
「さっきの質問の答えだが」
「うん?」
「恨んでどうする。俺が迫りくる現実から逃げず、きちんと気にかけていれば、母はきっと死なずにすんだ。理由はどうあれ、俺のせいであることは間違ってはいない」
「あなたは自分の予知が一週間猶予があることを、そのときは知らなかったじゃない。それに、きちんと王妃様にもエリオットにも報告していた。王妃様が死んだのはあなたのせいじゃないの」
フィデルの言いたいこともわかる。きっと、今までも事件後は〝母親殺しの犯人〟として扱われてきたのだろう。誰もそれを否定する人がいなかったのなら、私が否定してやる。
「……受け入れて、おとなしく暮らせばいいだけだ」
「どうして、今の生活を肯定するようなことが言えるの? 息苦しさを感じない?」
「逆だな。父や兄といるほうが、俺は常に息苦しさを感じていた。ここは自由だ。ひとりで好きなことを好きなだけしていられる」
「自由……? あなたは自由なようで、ちっとも自由じゃないわ。この小さな世界で、同じ毎日を繰り返しているだけ。同じ景色を見ながら、同じことをして、一日が終わるのを待つだけ。……行動を制限された生活は、自由とはいわない」
何年も、この部屋の中だけで暮らすなんて――自由からは程遠い毎日を過ごしながら、フィデルはそれをわかっていない。
現に、私が入ってきたときにフィデルが読んでいた本は、ボロボロでページが擦り切れていた。きっと、もう何度も同じ本を読んでいるのだろう。
「笑ったり、泣いたり、怒ったり……。人生ってそういうものの繰り返しよ。あなた、最近ひとつでもしたことある?」
「……ないな」
口をつぐんでいたフィデルが、ぼそっと呟く。