転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~

 フィデルが見た予知は、間違いなく明日の夜会で起ころうとしていることだ。

「私を嘘つき女扱いして、自分たちは婚約発表して周りから祝福されようだなんて……許せない」
 怒りがふつふつと沸いてくる。私はギリッと唇を噛みしめ、痛いほど拳を握った。
「で、まずはどうするつもりなんだ?」
「決まってるでしょ。明日の夜会をぶっ壊すのよ」
「……その夜会とやらは、いつの予定だ」
「明日」
「明日!? それ、間に合うのか?」

 そんなの、間に合わせるしかない。と言っても、今日はもう時間も遅い。

 ――あ。そういえば私、自分の荷物をまだ部屋に置いたままだった。今日のうちに取りに行かないと、まだ出て行ってなかったのかと怒られてしまう。

「フィデル、ちょっと待ってて。私、一瞬だけ城に戻らなきゃいけないんだった」
「……それは構わないが、どうやって出るつもりだ。ここは中から鍵は開けられない」
「大丈夫。今、ニールのおかげで鍵は開きっぱなしだから。フィデルも逃げようと思えばいつでも逃げられるわよ。今はまだ、待っててほしいけど」
「そうか。ニールも味方につけていたんだったな。……俺は、ここで冷めきった夕食でもとっている。また用があればきたらいい」
「ありがとう! って、せっかくの食事、冷ましちゃってごめんね。じゃあ、行ってくる!」

 私は急いで玄関まで行き、扉を開けた。すると、扉の前にニールが立っていた。
「あれ? ニール?」
「シエラ様。さっきぶりです。夕食の食器を回収に参りました」
「あ、そっか。そんなこと言ってたね。……せっかく来てくれたところ申し訳ないんだけど、フィデルはまだ夕食を食べ終わっていないと思うわ」

 何なら、今食べ始めたばかりだし。

「シエラ様! フィデル様とはうまくいったのですね! もう名前で呼び合っているなんて……!」

 ニールはフィデルの夕食事情よりも、私がフィデルと名前で呼んでいることのほうに注目し、ひとりで感動している。
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