転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
「だ、大丈夫よフィデル。同じベッドで寝る気はないから。私はこのソファでじゅうぶん……」
「なんの話だ。勝手な妄想で話すのをやめろ」

 ……どうやら、私の勘違いだったみたいだ。フィデルにとっては何年ぶりかに会った異性でしょ? 少しくらい意識してくれてもいいのに。

「じゃあ、寝る前にとりあえず、明日に向けて作戦会議しましょう」
「作戦もなにも、俺が別邸から外に出たってだけで、エリオットはパニックになると思うぞ。……久しぶりに力を使ったからか、すごく疲れた。今日はもう寝かせてくれ」
「……わかった。明日に備えて、私も早めに寝ることにする。おやすみ、フィデル」
「……ああ」

 だるそうに立ち上がり、フィデルはベッドルームに入ると、扉をバタンと閉めた。
 私はパンを食べ終わると、ソファにごろんと寝転んだ。

 ――フィデルがいなくなっただけで、一気に部屋が広く感じる。フィデルは、ずっとここでひとり、この天井を見上げてたのかしら。

 そんなことを考えていると、急に眠気が襲ってきて、私は目を閉じる。
 私もフィデルも、どうかいい夢が見られますように――。

****

 朝。甘い香りがして目を覚ます。いつの間にか寝てしまった私の体には、ブランケットがかけられていた。
 寝ぼけ眼で周りを見渡せば、ニールが笑顔で紅茶を淹れている姿が見えた。

「おはようございます。シエラ様」
「おはよう。ニール。もう朝食の時間?」
「ええ。もう少しで準備が終わりますので、ゆっくり召し上がってください。……そういえば、昨日あの後、エリオット様とロレッタ様は、もぬけの殻になったシエラ様の部屋を見て、シエラ様が城から出て行ったと完全に思い込んでいましたよ。ひとまず作戦成功ですね」

 ニールは楽しそうにそう言いながら、私の前にミルクたっぷりの紅茶が入ったカップを置いた。甘い香りのもとはこれか。

「ふん。きっと黙って出て行った私を、さぞかしふたりは馬鹿にして笑ってたんでしょうね」
「まぁまぁいいじゃないですか。笑えるときに笑わせてあげないと。どうせ今だけなんですから」

 サラッと腹黒発言をするニール。確かにその通りだけど。

「あれ? フィデルの姿が見えないけど、まだ寝てるの?」
「あ、フィデル様でしたら、先ほどシャワーを浴びにいかれましたよ。もうすぐ出てくると思います」
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