転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
〝特別〟の意味

 ……え? どうして?

 今世では、それを声に出すことができなかった。意味がわからなすぎて、私は体も思考回路も完全に停止している。

 ――私、今なんて言われた? 婚約を破棄? いやいやまさかそんな前世と同じことがあるわけないって! だって私は神様に幸せを約束されてるんだから。

「聞いているのか?」
「えっ? はい。……なんでしたっけ? もう一度言っていただいても?」

 私がそう言うと、エリオット様はめんどくさそうにため息を吐いた。……エリオット様のこんな顔、今まで見たことないんですが。

「何度もこんなことを僕の口から言わせないでくれ。君との婚約を破棄すると言っているんだ」
「……えぇ!? どうしてですか!?」

 二度言われてやっと、私の頭はこの現状を理解しようと少しだけ機能しだしたらしい。

 婚約破棄!? 私が!? どうしてよ神様! なにかの手違いじゃないの!?

 パニックになるのを抑えつつ、エリオット様のほうを見れば、向こう側に見えるロレッタがにやりと笑っていた。もしかして、ロレッタがなにか誤解になるようなことをエリオット様に吹き込んで私を陥れているんじゃ……。

「エリオット様! 突然そのようなこと言われても、私は納得できません! 理由があるなら、教えていただけないでしょうか」

 昨日まであんなに優しく私に微笑んでくれていたエリオット様が、今日は一度もその笑顔を見せてくれない。それどころか、私に向ける表情は冷たいものだった。

 また優しいエリオット様に戻って、『嘘だよ』と言って今すぐ私を抱き締めてほしい。そう思いながら、縋るように言う私に、エリオット様は残酷に言い放った。

「シエラ――君がガードナー家の血筋を引くものだけが持つ異能、〝千里眼〟の能力を引き継がなかったからだ」

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