転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
フィデルは私より先の起きていたのか。だったら起こしてくれればいいのに。
私も昨日はお風呂に入らないまま寝てしまったので、体や髪がベタベタしてる感じがして気持ち悪い。フィデルが戻ってきたら、私もシャワーを借りることにしよう。
「……起きたのか」
リビンングに、シャワーを浴び終えたフィデルが現れた。
王族と思えないほど、平凡な質感の、上下黒の地味な衣服を身に纏っている。髪はまだ水滴がだいぶ残っていて、首元にかかっているタオルを濡らしている。
「おはようフィデル。髪の毛、もっとちゃんと拭いたら?」
「うるさい。今やろうとしていたところだ」
余計な一言だったのか、朝からフィデルにキッと睨まれてしまった。コンビを組んだばかりだというのに、もっと仲良くなれるよう歩み寄れないものか……。
「大丈夫ですよシエラ様。フィデル様は昔から少々ズボラなところがありまして……。前までは私も口酸っぱく言ってたのですが、ここ数年は言うのを諦めちゃいまして。久しぶりに誰かに指摘されて、恥ずかしいだけです」
私が思っていることを察してか、ニールが私の耳元で小声で言う。
フィデルのほうを見ると、怒っているようには見えず、確かに、少し恥ずかしそうにして乱暴にタオルで髪をガシガシと拭きなおしている。そんなフィデルを見て、私はちょっぴりかわいいな、なんて思ったりした。
そのまま、フィデルとニールと一緒に和やかな朝食タイムを過ごし、ニールが城に戻るタイミングで私はシャワーを浴びにいく。
シャワーを終え、母からもらったお気に入りの緑に黒いレースがあしらわれたワンピースに着替えると、私はソファでくつろいでいるフィデルの正面に立って言った。
「フィデル、出かけるわよ」
「出かける、って。どこにだ」
「私の家。家族に会いにいけって言ってきたのはフィデルでしょ?」
「そうだが、一緒に行くと言っていなければついていく理由もない」
「あるわ。フィデルは私と手を組んだのだから、きちんとフィデルのこと紹介したいの。あと、
私の両親なら絶対異能のことを知っているし。フィデルの周りは、異能に詳しい人なんて誰もいなかったでしょ? どう? 興味ない?」