転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
フィデルの重そうな腰を上げさせるため、その場で考えた割には出来のいい理由を述べてみた。フィデルは腕を組み、考えこむような顔をしている。
「……そうだな。それは、俺が一緒に行く理由にはなる」
「でしょ!? そうと決まればすぐ行きましょう!」
「わ、わかった。けど少し待て」
私は座っているフィデルの腕を引っ張り、無理矢理立ち上がらせる。そのまま玄関まで行こうとすると、フィデルに制止されてしまった。
フィデルは部屋の奥にあるクローゼットからこれまた大きな黒いコートを取り出し、それを羽織るとフードまで被りだす。
「よし。これでいい」
本人は満足そうだが、私から見ると全身黒ずくめの怪しい奴にしか見えない。
「うーん。今日はすっごく天気がよさそうだから、そんな格好してたら暑いかもよ?」
「構わない。それに、顔を出して歩いて、もし万が一誰かに正体がバレたらどうする。困るのはお前だろう」
……そこまでちゃんと考えていなかった。フィデルの言う通りだ。正体がバレて作戦がパーになるくらいなら、怪しい男と歩いてると思われるほうが数倍マシね。
「そうね。今日夜会でフィデルの姿を世間にお披露目するまでは、フィデルの姿は誰にも見せないほうがいいわ」
「お披露目って、俺はお前に協力するだけだ。自分は目立たなくていい」
「えー? もったいない!」
『こんなにかっこよくて、魅力的な人なのに』と言おうとしたが、言ったところでフィデルの心に響くとは思わなかったので、私は口を閉じた。
ニールのおかげで中からも開けられるようになった玄関のドアノブに手をかければ、隣でフィデルが胸に手をあて、すぅーっと深呼吸をしていた。
……そうか。フィデルにとっては、何年振りかの〝外〟なんだ。
「ねぇフィデル。やっぱり、フィデルが開けて?」
私はドアノブから手を離すと、クスッと笑いフィデルに言った。
「……俺が?」
「うん。だって、今から外に出るんだよ。ずっと同じだったフィデルの世界が、大きく広がる瞬間だもの」
だから、自分のその手で開けてほしい。
私の意図を感じとってくれたのか、フィデルはごくりと喉を鳴らし、ドアノブを掴んで扉を押した。
今まで決して中から開かなかった扉が、ギィーっと音を鳴らし、フィデルの緩やかな力によってゆっくりと開かれていく。
ザァッと暖かい風が、歓迎するように私たちを包んだ。真っ青な空に、白い雲。光り輝く太陽が、心地よく体を照りつける。
「……まぶしいな」
外に出たフィデルの第一声は、それだった。
顔を見上げれば、空を見上げて目を細め――そして、控えめではあるものの、どこか嬉しそうに微笑むフィデルの姿があった。
「……そうだな。それは、俺が一緒に行く理由にはなる」
「でしょ!? そうと決まればすぐ行きましょう!」
「わ、わかった。けど少し待て」
私は座っているフィデルの腕を引っ張り、無理矢理立ち上がらせる。そのまま玄関まで行こうとすると、フィデルに制止されてしまった。
フィデルは部屋の奥にあるクローゼットからこれまた大きな黒いコートを取り出し、それを羽織るとフードまで被りだす。
「よし。これでいい」
本人は満足そうだが、私から見ると全身黒ずくめの怪しい奴にしか見えない。
「うーん。今日はすっごく天気がよさそうだから、そんな格好してたら暑いかもよ?」
「構わない。それに、顔を出して歩いて、もし万が一誰かに正体がバレたらどうする。困るのはお前だろう」
……そこまでちゃんと考えていなかった。フィデルの言う通りだ。正体がバレて作戦がパーになるくらいなら、怪しい男と歩いてると思われるほうが数倍マシね。
「そうね。今日夜会でフィデルの姿を世間にお披露目するまでは、フィデルの姿は誰にも見せないほうがいいわ」
「お披露目って、俺はお前に協力するだけだ。自分は目立たなくていい」
「えー? もったいない!」
『こんなにかっこよくて、魅力的な人なのに』と言おうとしたが、言ったところでフィデルの心に響くとは思わなかったので、私は口を閉じた。
ニールのおかげで中からも開けられるようになった玄関のドアノブに手をかければ、隣でフィデルが胸に手をあて、すぅーっと深呼吸をしていた。
……そうか。フィデルにとっては、何年振りかの〝外〟なんだ。
「ねぇフィデル。やっぱり、フィデルが開けて?」
私はドアノブから手を離すと、クスッと笑いフィデルに言った。
「……俺が?」
「うん。だって、今から外に出るんだよ。ずっと同じだったフィデルの世界が、大きく広がる瞬間だもの」
だから、自分のその手で開けてほしい。
私の意図を感じとってくれたのか、フィデルはごくりと喉を鳴らし、ドアノブを掴んで扉を押した。
今まで決して中から開かなかった扉が、ギィーっと音を鳴らし、フィデルの緩やかな力によってゆっくりと開かれていく。
ザァッと暖かい風が、歓迎するように私たちを包んだ。真っ青な空に、白い雲。光り輝く太陽が、心地よく体を照りつける。
「……まぶしいな」
外に出たフィデルの第一声は、それだった。
顔を見上げれば、空を見上げて目を細め――そして、控えめではあるものの、どこか嬉しそうに微笑むフィデルの姿があった。