転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
 別邸に戻ると、時刻は十五時をちょっと過ぎたところだった。
 思いのほか、外で時間を取ってしまった。夜会は予定では二十時に開始予定だ。あと五時間しかなというのに、どうするかまったく決めていない。

「まずいってフィデル! 時間がない!」
「お前が帰り道買い食いしてたからだろ。あれはかなりのタイムロスだったぞ」
「うっ……! と、とにかく、もう夜会の準備を始めてると思うから、私の力でエリオットとロレッタの現状を見てみるわ」

 ふたりにとって、今日の夜会は婚約お披露目会でもある。相当浮かれていることだろう。 
 意識を集中させ、一度閉じた目をカッと開く。

 見えた。エリオットとロレッタの姿が。一緒にいてくれたおかげで、二度力を使わずに済んでありがたい。

 ふたりは今、夜会用の衣装を選んでいる真っ最中のようだ。

『ロレッタ、君にはこのドレスが似合うよ!』

 ベビーピンクの、これでもかというくらいフリフリのレースたっぷりなドレスを片手に、エリオットは得意げに言う。かつての婚約者ながら、そのドレスの趣味はいかがなものかと思う。私にはいつも、『女性は清楚で可憐でいなくちゃ』とか言って地味なドレスばかり勧めてきてたってのに! 

『エリオット様、こんなかわいらしいドレスを着たら、私がドレスに負けてしまいますわ』

 と、言いつつ満更でもない顔をしているロレッタ。絶対に自分が負けるなんて思っていないのがまるわかりだ。

『そんなことないさ。君以外が着れば負けてしまうだろうけどね。たとえば……僕の前の婚約者だったら、着こなせたと思うかい?』
『ふふっ! もうエリオット様ったら。例え話にしてもひどすぎますわ』
「はあぁぁ!? こっちから願い下げよ! そんなだっさいドレス!」

 ここでも勝手に笑いものにされ、怒りが抑えられずおもわず叫ぶと、隣に座っていたフィデルの肩がビクッと跳ねた。

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