転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
「もったいない! フィデルはこんな地味な服でも着こなせる見た目をしているんだから、いいもの着たら今よりもっとかっこよくなるのに!」
「なんでもいいだろ服なんて。夜会自体を楽しむために行くわけじゃないんだぞ」

 フィデルの意見も一理あるが、私はさっき馬鹿にされたことを根に持っている。衣装でもエリオットとロレッタに負けたくない。

「あっ! エリオットのクローゼットにフィデルにすっごく似合いそうな衣装があるわ! ロレッタが今右手に持ってるドレス、素敵……。あれは絶対に、あの女より私のほうが似合う!」

 フィデルを無視して、また力を使いふたりの様子を見ると、ちょうど私とフィデルに合う衣装を見つけた。

「俺はあいつのおさがりを着るなんてごめんだ。お前だって、嫌じゃないのか?」

 はしゃぐ私に、呆れたようにフィデルは言う。

「嫌だけど、服に罪はないじゃない。むしろあんな奴らに着られる服がかわいそうだと思わない? だからエリオットのクローゼットから盗――拝借しましょ」
「今盗むって言いかけてたよな」
「え? 気のせいじゃない? こういうとき頼りになる人がいるから、ニールに呼んできてもらおう!」

 私は別邸に一日何度か様子を見にきてくれるニールに頼み、ドリスさんを呼んでもらった。

「フィデル! 元気だったの!? こんなにいい男になって……!」

 部屋に入った途端、ドリスさんはフィデルとの再会がよほどうれしかったのか、フィデルをぎゅうぎゅうと抱き締めた。ドリスさんには逆らえないのか、されるがままでぐったりしているフィデルがおかしくて、私は笑いながらふたりの再開を見届けた。

 ドリスさんが久しぶりのフィデルを堪能し満足したところで、私たちは本題に入る。

 まず、ドリスさんには私がまだ言っていなかった、〝千里眼〟の力が目覚めたことを話した。エリオットに婚約破棄された本当の理由も。

「なるほどねぇ。これでやっと、あんたがいきなり婚約破棄されたことに納得がいったわ」

 ドリスさんは人差し指に自分の髪を巻き付けながら、うんうんと頷いた。
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