転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
いざ、夜会へ!
「シエラ様! こちらにお座りくださいませ」

 ドリスさんのシナリオとやらを聞き終わり、作戦を立てたあと、ニールが頼んでおいた衣装を持って別邸へとやってきた。

 時刻はもう十九時を過ぎている。夜会開始までもうすぐだ。

 ニールはドレスに着替えた私を鏡前に座らせると、器用に髪の毛をセットし始める。そこまでしてくれなくていいと言ったが、ニールが自らやらせてくれと頼んできたので、お言葉に甘えることにした。

 私の長い髪が、ニールの手によって綺麗にまとめられていく。そして見事に、かわいくて上品なアップヘアーが仕上がった。

「すごいわニール! なんだか私じゃないみたい。一気に大人っぽくなった気がする」

 鏡に映るいつもより華やかな姿の自分を見て、テンションが上がる。

「シエラ様は、いつものハーフアップもお似合いですが、そちらですとまだかわいらしい印象が強いかなと思いまして。すべてまとめることで、大人っぽく、色っぽさが増しましたよ」
「優しいなぁニールは。そんな褒めてくれるの、ニールだけよ。ありがとう」
「喜んでいただけて光栄です。間違いなく、今日の夜会でいちばん美しい女性はシエラ様ですよ」

 私に自信をつけさせるように、ニールは言う。エリオットとロレッタに馬鹿にされ傷心した私の胸に、ニールの優しさが染み渡った。

「さて。シエラ様を見送ったら、次はいよいよフィデル様のご準備です! ああ、フィデル様が夜会に参加するなんて……いつぶりのことでしょうか」

 ニールは目を輝かせ、フィデルを着飾るのを今か今かと待ち構えているようだった。当の本人は涼しい顔で、興味なさそうにソファで本を読んでいる。 
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