転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
 え? どうして私のほうにくるの? まさか、本当はやっぱり私が好きだとでも言い出すつもり?
 おろおろする私を見て、エリオットはにっこりと、付き合っていたときと同じ優しい微笑みをこちらに向けた――と思えば、そのまま笑死の横をスッと通り過ぎた。
 私のすぐ後ろに、ロレッタが待機していたのだ。エリオットはロレッタを指名し、ふたりは仲睦まじく手を取り合いフロアの中央へと歩いていく。

 ……私に淡い期待を抱かせるため、わざとこんなことするなんて。悪趣味にもほどがある。

 怒りを耐えるため、目を閉じ深呼吸をしていると、客人のうちの誰かがふたりに向かって叫んだ。

「エリオット様は、ロレッタ嬢とどういうご関係なんですか!?」

 この場にいる誰もが気にしていたであろうことを直接問いただされ、どうするのかと思いエリオットを見る。エリオットは待ってましたといわんばかりにロレッタの肩を抱き言い放った。

「ロレッタが僕の正式な婚約者だ。近々、僕は彼女と結婚をする。そして、以前婚約を交わしていたシエラ・ガードナーと婚約破棄したことをここに発表する!」

 エリオットの言葉を皮切りに、大広間に様々な声が響いた。

「シエラ嬢と婚約しているときから、ロレッタ嬢と関係があったのか」
「だったらなぜ、長い期間シエラ嬢と婚約していたんだ?」

 様々な声が上がるなかで、一番多かったものは――。

「どうして、婚約破棄されたのですか!?」

 エリオットとロレッタの口元が、いやらしく歪むのが見えた。ふたりはここで、私を悪者にするつもりなんだ。

「シエラは……僕に大きな嘘をついていたのだ!」
「……私が、どういう嘘をついたというの?」

 会場に入って、私は初めて口を開く。
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