転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
「彼女の家――ガードナー家は、この国で唯一の異能者が生まれる血筋を持っているのだ。シエラはそのことを利用して、僕に〝自分は異能を持っているから婚約者にしてくれ〟と迫ってきた。僕は、いずれ自分が国をまとめる王へとなったとき、この能力があれば、今よりもっと国を豊かにできると思い、シエラの申し出を受け入れた。本当に愛するひとがいながら、僕は国のためだけを想って……。でも、シエラはまったくなんの力も持たない、普通の人間だったのだ! 僕は数年もの間、彼女に騙されていた!」
「違う! 私はそんなこと言っていない!」
「嘘をつくな! 理由もなく、僕が君のようななにも持たない女性と婚約するわけがないだろう! この女は自分が権力を得たいがために、異能者であると嘘をつき、無理矢理僕と結婚しようとしたんだ!」

 周囲の視線が私に集まる。その視線はどれも冷たく、私の体に突き刺さる。やはり私がいくら声を上げ否定したところで、誰も信じてはくれない。

 この展開は予想通りだけど……案外きついものがある。

 私の周りから人が去り、完全に孤立した状態になった。軽蔑の目を向ける周囲の人間と、嘲笑うように私を見るエリオットとロレッタ。

 誰も味方がいない苦しさから、私は絶望したようにその場に膝をついた。ただ悔しそうに、床を見ることしかできない。

「シエラ・ガードナー! この女はとんでもない大嘘つきだ! そんな人間がいくら膝をつき泣いたところで、手を差し伸べるものなんて誰もいな――」
「それはどうだろうか」

 エリオットの声を遮るように、大広間に低い声が響いた。
 そして、開いた扉から、私が選んだ衣装をばっちり着こなしたフィデルが姿を現した。
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