転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~

「ということでシエラ。君は僕の婚約者でなくなったのだから、明日には城から出て行ってもらう。話は以上だ。それじゃあ」
「エリオット様! 待っ……!」

 待ってくれるはずがなく――エリオット様はロレッタの肩を抱き、ふたりは仲良く広間から出て行った。
 学園を卒業してからは、エリオット様の婚約者という立場があったから城に置いてもらっていた。出て行けということは、もうここに私の居場所はないということだ。

「……どうしてよ、神様」

 誰もいなくなった広間で、絶望した私は膝から崩れ落ちた。ずっと我慢していた涙が床にポタポタと零れ落ちる。
 何度神様の手を借りて人生をやり直したって、幸せになんてなれないと言われているような気分になった。
 これ以上あんな最低な奴らのことで涙を零したくなくて、瞬きするのを我慢していると、涙でぼやける視界になにかが浮かんでくる。

 ――後ろで結わえられた水色の長い髪。すらっとした抜群のスタイル。吸い込まれそうなほど美しい青い瞳。……あれはエリオット様? 隣に見えるのは、金色の縦ロールを揺らし、大きな瞳を輝かせエリオット様を見つめる女……ロレッタで間違いないわね。
 なぜか目の前にいるはずないふたりの姿がぼんやりと――やがて、はっきりと私の目に映った。
 それはドラマのワンシーンを見ているように、動きはもちろん、声までも私の頭に響いて聞こえてくる。

『婚約破棄をした理由は、シエラが能力があると嘘をついて、エリオット様に無理矢理婚約を迫ったことにすればいいのでは?』

 城の廊下を満足げに寄り添いながら歩くふたり。意地の悪そうな笑みを浮かべたロレッタがエリオット様にそう話しかけていた。
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