転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
キノコ眼鏡とおもちゃ屋さん
 夜会のあと、別邸へと戻った私とフィデル。
 ドリスさんとニールには、城を出る際に改めて『なんでも協力する』と言ってもらえた。

「ねぇフィデル、フィデルが見た予知のことなんだけど」
「悪い。力を使ったからか、久しぶりにあんな大勢の視線を浴びたからか……体が重くて仕方ない」

 すぐにフィデルに、予知のことを詳しく聞こうとしたが、フィデルはひどく疲れた顔をして私に言う。

「話をするなら、明日でいいか」
「あっ……うん。そうだよね。明日また、ゆっくり話そう」
「ああ。そうしてくれ」

 フィデルは昨日みたいに、シャワーも浴びずすぐにベッドルームへと消えていった。……せめて服は着替えたほうがいいと思うけど。あの高価な服のまま寝るつもりなんだろうか。
 フィデルに動きやすい服を持っていこうと思ったが、今はそっとしておくことにした。ベッドルームに予備の服があるかもしれないし。

 それに、私がフィデルの許可も得ず勝手な約束を交わしたことを、フィデルは内心よく思ってなかったらどうしようという不安もあった。勢いであんなことを言ってしまったけど、大丈夫だろうか。怒ってるふうには見えなかったけど……。

 そういった気になっていることも明日聞いてみようと思い、私は窮屈だったドレスを脱ぐとシャワーを浴びて、寝る準備を整えた。
 ソファに横になってブランケットをかぶると、どっと疲れが押し寄せてくる。このまま私もすぐ眠ってしまいそうだ。

 ――そうだ。寝る前に、こっそりフィデルの様子を見てみよう。

 私は閉じていた目を開けて、能力を使いフィデルを見た。そこには、着替えもせずにベッドですやすやと眠っているフィデルの姿があった。
 窮屈だったのか、上着の前のボタンだけ全開にしている。インナーもはだけており、フィデルの細い腰がちらりと見え――って、私、なにやってるの!

 なんだかいけないことをしている気分になり、私はすぐに何度も瞬きをした。目の前からフィデルの姿が消えたものの、脳裏にすやすやと眠るフィデルのセクシーな姿が焼きついている。

「……〝千里眼〟。確かに恐ろしい力かもしれない」

 ひとりで馬鹿なことを呟いて、私はまた目を閉じた。今度はなかなか寝付くことができず、私は出来心でフィデルを見たことを後悔した。
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