転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
「どんな光景だったかは、覚えてる? 詳しい場所とか……」
「わからない。大きな建物で、人はたくさんいた気がする」
「そんな場所、たくさんあるからなぁ……」

 ヒントがなさすぎて、探しようがない。国中の大きな建物を全部調べていたら、その間に事件が起きてしまいそうだ。

「爆発っていうのが気になるわね。誰かが意図的に起こす事件、ってことかしら」
「一概にそうとはいえないだろ。事故もじゅうぶんありえる。ただ、ひとつ言えるのは……間違いなく、別邸(ここ)ではなかったというくらいだ」
「まぁ、ここだったらフィデルも見た時点ですぐ気づくわよね」
「そうだな。だから、巻き込まれたくなければ一週間ここにいればいい」

 フィデルが急にそんなことを言い出したので、私は驚く。

「なに言ってるの? 私たちは、この事件を解決するために今から頑張るのよ? それとも、フィデルは自分が安全だったらいいってこと!?」
「そうじゃない。お前は今からどれだけ危険なことをしようとしているのかわかってるのか? きちんと解決できればいいが、事件自体に巻き込まれれば命の危険だってある。もし、俺のことを気にしてやろうとしているだけなら、お前は逃げたっていい」

 フィデルは言い終わると、私から視線を背け俯いた。

 私、最低だ。一瞬でも、フィデルが逃げようとしたと思うなんて。私がフィデルに選択肢を与えてほしいと思ったように、フィデルも私を心配して、安全な選択肢を与えてくれようとしていただけだった。

「フィデル、私は大丈夫だよ。ありがとう。心配してくれて」
「別に、そういうつもりじゃない。あとから逆恨みされても困るから教えてやっただけだ。お前に恨まれると大変だってことを知っているからな」
「もう! 素直じゃないんだから! それに、フィデルは物事をマイナスに考えすぎよ。私たちふたりで力を合わせれば、怖いものなしでしょ? だから、絶対どんな事件も解決できる」
「それは、お前がプラスに考えすぎなだけじゃないか? 俺たちは異能者なだけで、探偵でもなんでもないんだぞ」

 やっと顔を上げたと思えば、フィデルはまた悪態をついてきた。
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