転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
「黒髪で、キノコのような髪型の……大きな丸眼鏡をかけていたな」

 閃いたようにフィデルは言うが、私もそんな見てくれの人物に心当たりはない。なので、私の力でそのキノコ眼鏡くんを見ることも当然不可能だ。

「どうしてそんなモブキャラみたいな人のこと覚えてるのよ!」
「失礼なことを言うやつだな。やたら印象に残ったんだ。マスコットみたいで」
「でも今はそれしか手がかりがないのよね。じゃあまずは、キノコ眼鏡くんを捜すしかないわ」

 特徴的な人物なら、誰かに聞けばすぐ辿り着けるかもしれないし。

「そうだな。それに、そいつにはちょっと違和感があったんだ」
「違和感?」
「ああ。ほかのいろんなやつらが叫びながら逃げているなかで、そいつだけやたらと冷静だった。まるで事件が起きるのをわかっていたというように。憶測でしかないが……事件を起こす実行犯側の可能性は捨てきれない」
「犯人ってこと!?」
「憶測だぞ。だが、接触してみる価値はあると思う」

 さすがフィデル。見た目が特徴的だから覚えてたって理由だけじゃなかったのね。もしフィデルの言ってることが当たっていたら、私たちは一気に事件解決に近づける。

「じゃあ、すぐに街へ出てキノコ眼鏡くんの情報を集めましょ! ……っと、その前に。ちょっと能力を使っていいかしら?」
「いいけど、なにを見るんだ?」
「エリオットとロレッタが変な動きしてないか、一応確認。あのふたり、私たちの邪魔をしてきそうでしょ?」

 「それはそうだな」と、フィデルも納得の様子だ。

 私は手始めに、ロレッタの様子から見ることにした。力を使うと、ロレッタが誰かと話している姿が見える。どうやら、今はエリオットと一緒ではないようだ。

 ロレッタはエリオットの前では決して見せないくらい不機嫌な顔をしている。
 相手は誰だろう? そう思い、私はロレッタと話している相手にピントを合わせると――。
< 68 / 147 >

この作品をシェア

pagetop