転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
「そうね。じゃあ今すぐ行きましょ! ロレッタのところへ!」

 軽く充血していた目に、スーっとした気持ちいい感覚。これからの私の長い人生に、目薬は必需品になりそうだ。
 私は目薬をワンピースのポケットに突っ込むと、フィデルと一緒に城へ向かった。


 城の中に入ると、すぐにロレッタを発見することができた。
 たくさんの本やノートを抱え、憂鬱そうに廊下を歩いている。きっと王妃教育の勉強で、ドリスさんのところへ向かう最中に違いない。

「ロレッタ、ちょっといい?」

 私とフィデルがロレッタのほうに歩み寄れば、ロレッタは私を見てそれはそれは嫌そうな顔を見せた。

「なにかしら? 私は今からエリオット様の妻になる為に、大事な勉強があるのだけど」
「へ~。ドリスさんから聞いたけど、全然進んでないらしいじゃない。大丈夫? よければすべて終えた私が一緒に教えてあげようか? というか、今日はエリオットは一緒じゃないのね」

 いつもの仕返しに、と思い嫌味っぽい言い方をしたら、ロレッタはキッと私を睨んだ。

「余計なお世話よ! エリオット様もお忙しいの! 私たちは、お互いの未来のために必要なことを離れたところでしているだけ……。気持ちはいつも繋がってるわ」
「はあ……そうですか」

 うっとりと胸に手を当てて言っているが、心底興味がない。フィデルも隣で、哀れな人を見るような目をしてロレッタを見ていた。

「で、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「はあ? だから、私は忙しいって言ってるじゃない。あなたの言うことを聞くわけ――」
「少しでいいんだ。時間はかけさせない」
「……仕方ないわね。ちょっとだけだから」

 私の言うことには聞く耳を持たなかったくせに、フィデルが声をかければころっと意見を変え、なんなら少し嬉しそうにしている。
 エリオットの婚約者のくせに、この女、イケメンだったら誰でもいいんじゃないの? でも、フィデルは絶対に渡さないんだから! 私の大事な相方だもの!
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