転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
「さっき、丸眼鏡をかけた、キノコのような男と話していたよな?」

 勝手にロレッタに闘志を燃やしていると、フィデルが用件をロレッタに伝えてくれていた。

「ええ。話してたけど、それがなにか?」

 丸眼鏡とキノコという単語だけですぐに伝わるのが、ちょっぴりおもしろくて笑いそうになる。

「そいつとは、どういう関係なんだ? 知ってることを教えてくれないか?」
「関係って、あんな冴えない男と私が深い関係なわけないでしょう。学園時代、委員会が同じだっただけ。それ以上でも以下でもございませんわ」

 え!? ってことは、私とも同じ学園の人ってことよね? 生徒数はそこまで多くはなかったけど、あんな人は記憶にない。私自身、学園でほとんど人と話すことなかったし。

「ん? でも、じゃあなんでさっき話してたの? 卒業してからも話すってことは、それなりの関係があったんじゃないの?」
「関係なんてないわ! どうして私があんな男と。もういいかしら? これ以上くだらない立ち話をする時間はないの」

 ロレッタはムキになったように、キノコ眼鏡くんとの関係を否定すると、私たちに背を向けてさっさと歩き出す。

「あ、待って! これだけ教えて! 彼の名前はなに!?」
「ああもうっ! しつこいって言ってるじゃない!」
「それだけ教えてくれれば、もうなにもお前に詮索はしない」

 フィデルが声を上げると、ロレッタはピタリと足を止め、少しの間が空く。

「…………コディ。コディ・フェーヴル」

 小さな声で、キノコ眼鏡くんと思われる人の名前を呟くと、ロレッタはスタスタと歩き出し、今度こそ止まることはなかった。
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