転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
 私とフィデルは、夜会の一件から世間を賑わせている〝時の人〟になっているようだ。

「この店に、なにか用でしょうか……? 昔作った古いおもちゃしか置いてませんが……」
「おもちゃというより、あなたに用があってきたの」
「えぇ!? 僕に!? どうしてですか!?」

 コディの反応はいたって普通だ。そりゃあいきなり私たちが押し掛けてきたら、驚いて理由も知りたくなるものよね。
 けど、なんて返せばいいのかしら。予知でコディの姿を見たというのも言ってはいけない気がする。だって、もしかしたら実行犯の可能性があるわけだし……。

「今、エリオットとロレッタの周りの人物にいろいろ聞いて回ってるんだ。俺が見る予知は、身近な人の周りで起きやすいから、手がかりがほしくてな。お前がさっきロレッタと話しているところを偶然見かけて、申し訳ないがこっそり後を着けて話しかけるタイミングを伺ってたんだ」

 私が迷っていると、フィデルがさらっと当たり障りのない返事をしてくれた。

「そうだったんですか。あれ? でも、よく僕なんかの名前を知ってましたね……」
「ああ……それなら、お前がしている名札を見て知った」

 フィデルは、コディがエプロンの胸元に刺している名札を指さした。すごい。咄嗟の判断で難なくコディの答えにくい質問をかわしていく。

「それまでは、キノコ眼鏡と呼んでいた。主にこいつが」
「ちょっとフィデル! それ言う必要ある!?」

 名札をさしていた指が私に向けられ、真顔で言うフィデルの口を、私は焦って塞いだ。

「……えーっと、ごめんなさいコディ。名前がわからなくて、つい」
「はは。いいですよ。慣れてるので。誰も僕の名前なんて覚えようともしませんから」

 コディの顔は笑っているが、心は絶対笑ってない気がした。

「そ、そんなことないって! 私はもう完璧に覚えたし! ねぇ、さっきから思ってたんだけど、コディはこの店の子なの?」

 沈んだ空気を変えるため、他の話題をふってみることにする。
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