転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
「そう。学園生活において得たものや学んだことを話すとか言ってたけど、ただふたりのバカップルぶりをいろんな場所に見せつけたいだけでしょうね。正式に婚約者になってからふたりで学園に行くのは初めてだって、やけに張り切ってたわ」

 学園時代は私が婚約者だったから、学園で大々的にふたりがいちゃつくことはできなかったものね。やはり能力を使うまでもない、くだらない理由だったか。

「のんきなものよね。あんなのに王位を継がせる気でいるなんて、正気じゃないわ。だから、あんたたちはなんとしても事件を解決するのよ! フィデルが自由になれば、あたしがフィデルを次期国王に育ててあげるから」
「……勘弁してくれ。俺は別にそんな立場を望んではいない」
「そういうわけにはいかないわ。あんたが望まなくても、国民が望むかもしれない。王家の息子に生まれたからには、その覚悟だけは捨てずに持っていなさい」

 力強いドリスさんの言葉に、フィデルは黙ったままだった。

 私としても、エリオットが王になるよりフィデルがなってくれたほうが安心だ。一国民の意見としてだけど。
 でもフィデルからしてみたら、城で過ごした時間より、ひとりで別邸で過ごす時間のほうが長かったわけで。自分が王族という意識が、ほぼ消えているように思える。いきなりまた第二王子としての振る舞いを求められても、フィデルには難しいことだ。

「で、あんたたちもこんなとこでのんきにしてるってことは、事件解決のめどは立ってるのね?」
「うっ……。えっと、それが」

 口ごもる私を見て、ドリスさんは私たちの現状を察し「さっさと調査しなさい!」と速攻で部屋を追い出された。
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