転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
遠ざかる自由
 
 走って着いた先は、街のレストランだった。
 炎はすっかり消えているが、焦げて真っ黒な箇所がいくつかあり、外壁は焼き剥がれている。
 コディは事件そのものに巻き込まれてはおらず、野次馬のなかに紛れていただけのようだ。姿を見つけ話しかけようとするが、こちらに気づくことなくすぐにどこかへ行ってしまった。

 ――私が、ちゃんと見ていなかったからだ。勝手に浮かれて、本来やるべきことをやっていなかった。

「フィデル……フィデルが見た予知って、この事件なの?」
「……わからない。違うとも違わないとも、断定できない」

 大きい建物が爆発音とともに真っ赤に燃え上がり、人々が逃げまとう。フィデルが言っていた予知の光景だ。
 レストランは見る限り、そこまで大きくはないが小さいともいえない大きさで、爆発音の情報はいまのところない。
 中には数人の従業員と客がいたようだが、全員無事に助かり、軽症者が出ただけで済んだようだ。

「……これは、どっちなんだ」

 フィデルは頭を抱えている。自分が見た予知を、今一度思い出しているのだろうか。頼りにできるのはフィデルの記憶のみで、なにもできない自分が悔しくてたまらない。
 もしこれが、フィデルの言う事件だったら――私たちは、解決できず失敗したことになる。それは、自由を失うということ。

「いいところにいるじゃないか。来るのが遅すぎたみたいだけどね」

 私たちの前に、エリオットが現れた。事件の被害者たちも、エリオットの後に並び、恐い顔をしてこちらに睨みを利かせる。
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