転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
「……僕はお前たちの力を過信していたようだ。お前たちなどなにも怖くない。ふたり揃ったところで力を発揮できなければ、権力の前では無意味なんだよ」

 耳元で、エリオットがそう言った。私は見えなくなるフィデルの背中に向かって叫んだ。

「フィデル! フィデルーーっ!」
 兵士に囲まれているせいで、フィデルがこちらを振り返っているかどうかもわからない。
 そのまま私も城に連れて行かれ、城の一室へと閉じ込められた。
 
 ここは、城のどこの部屋だろうか。長く使われていなさそうな部屋の中は埃っぽく、物もほとんど置いていない。
 空っぽに近い部屋で、私は特に縛られたりすることもなく、ただ部屋に放り込まれ鍵をかけられただけ。

 ――すぐに地下牢行きと思ったのに、拍子抜けだ。

 フィデルは大丈夫だろうか。コディの見張りのために力を使い過ぎたせいで、今使っても、きっと僅かな時間しかフィデルを見られる時間は残っていない。

「やあシエラ。さっきは手荒い真似をして悪かったよ」
「エリオット!? ……なんの用?」

 突然扉が開き、エリオットが部屋に入って来た。ロレッタの姿は見当たらない。
 私とふたりで、なにを話そうというのか。後ずさって、エリオットと距離を取る。しかし、そんなことはお構いなしに、エリオットは私へ近づく歩みを止めない。

 ついに逃げ場のない壁際まで私を追いやったところで、エリオットは満足そうな笑みを浮かべた。
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