転生令嬢はまるっとすべてお見通し！～婚約破棄されたら、チートが開花したようです～

「どうして、自分はこんなぬるい拘束で済んでいるのか、疑問に思っているんじゃないのか？」
「ええ。思ってるわ。あなたがなにか、企んでいるとも」
「企むなんて人聞きの悪い。僕はただ、シエラに聞きたいことがあったんだ」
「……聞きたいこと？」

　エリオットは私の顔の横に手をついて、もう片方の手で私の顎をクイっと上に向かせた。

「僕とやり直さないか？」

　耳を疑うような言葉に目を見開く。エリオットはそんな私の反応すら予想通りというように、表情ひとつ崩さない。

「ふざけないで……！　なにを言っているの！？」

　私は顎に添えられたエリオットの手を払い、体を強く押しのけた。
　軽くよろめくも、エリオットの余裕が消えることはなく、未だにやにやと笑ったままだ。

「どうしてそんなに怒る？　夢にまで見た言葉だろう？　僕がまた、君を婚約者にしたいと言っているんだ。今ならまだ間に合う」
「なにが間に合うよ！　ロレッタはどうするつもり？　私に〝千里眼〟の力が宿ったから、惜しくなっただけのくせに……！」
「ロレッタは王妃教育が全然だめでね。このままじゃ、いつまで経っても結婚できる気がしないんだ。別に能力が目的じゃない。さっき言ったろう？　お前たちの力なんて、僕という権力の前では無意味だと」

　上から見下ろされ、蔑むような視線を送られる。見たことのないエリオットの鋭い目つきに、
体がビクッと震えた。

「……でも、そうだなぁ。いつからシエラが能力を持っていたのかは、ずっと気になっていたんだ。教えてくれないか？」

　私の震えに気づいたのか、小さな子供をあやすように、エリオットは私の頭を優しく撫でた。昔は温かく感じた大好きだった手が、今は氷のように冷たく感じる。

「……いいわ。そんなに知りたいなら教えてあげる」

　エリオットの圧迫感にのみこまれないよう、私も負けじと余裕そうに笑ってみせる。

「私は、信じていたあなたに婚約破棄され大きなショックを受けた。奇しくもそれが、私の力が目覚める引き金となったのよ。ざまぁみなさい！」

　言い終わると、エリオットに向けてべーっと舌を出した。私の幼稚な挑発がダメージを与えることはなく、エリオットは下を向いて肩を震わせている。