転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
「……どうして!? 実の弟でしょ!? どうしてそんなにひどいことができるの!? フィデルがなにをしたっていうのよ!」
「なにをした? あいつは母親を殺してる! 今回だって、中途半端な予知で国中に迷惑をかけた! あいつの〝予知能力〟は、不幸しか呼ばない。誇り高いバラクロフ家に……いや、この国に間違えて生まれ落ちた悪魔なんだよ!」
「違う! フィデルは悪魔なんかじゃない!」

 私も、エリオットも、呼吸が荒くなるほど大きな声を出したせいか、肩が上下に揺れている。
 エリオットが、幼い頃の劣等感からフィデルを異常なほど憎んでいるのはわかっている。でも、フィデルは悪魔じゃない。

 ――フィデルは、特別な力を持っただけの、ただの普通の人間だ。

 不器用で、シャイで、口が悪くて……でも、本当はとっても優しい。私の知ってるフィデルは、そういう人間だ。

「フィデルを悪魔というのなら、私も悪魔よ。フィデルと同じ異能者だもの。あなたは悪魔と婚約するつもり?」
「シエラの持つ力は、あいつの不幸を呼ぶ力とは違う。ガードナー家の血筋が持つ〝千里眼〟の力は、今までも国に多くの貢献をしてきた。しかも、お前の力は僕が呼び起こした力だ。僕とシエラが組めば、最上級の幸せが手に入ると思わないか」
「そんなものっ……」

 エリオットといて、幸せなど手に入るはずがない。

「……一日だ。一日だけ猶予をやる。僕は明日演説があるから、朝から準備で忙しい。演説が終わって帰って来るまでに、どうするか決めておくといい」

 私は返事もせず考えていた。自分がどうするかではなく、フィデルのことを。

「それじゃあ。明日、シエラの返事を楽しみにしているよ」

 エリオットは、くるりと向きを変えて私の前から去って行く。
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