転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
 さっさと部屋から出してもらおうと思ったが、エリオットはまた私の頭を撫で『じゃあまた明日』という言葉を口にした。

「シエラをこの部屋に閉じ込めているのは、僕の独断でやってることだから、申し訳ないけど、今日はここで過ごしてくれないか? 演説が終わってロレッタと話をつけたら、きちんとシエラを解放するよ」
「……は、はい。わかりました」
「シエラ。おやすみ。いい夢を」

 エリオットは手を振って、部屋から出て行った。ガチャリ、と鍵をかけられる音がする。
 ひとりになった部屋で、私は自分の着ているロングカートのポケットをまさぐり、ひとつの鍵を取り出した。――抱き着いたとき、盗むことに成功した、フィデルが閉じ込められている地下牢の鍵。

 最後の力を振り絞るように、〝千里眼〟を使ってフィデルを見ると、地下牢でぐったりとし、ピクリとも動かないフィデルの姿が目の前に浮かび、滲んで消えていく。

「私が助ける……必ず」

 持っている鍵を、両手で強く握りしめた。

 エリオットがこの部屋に来る前に、私がここを抜け出して、フィデルを助け出さなくては。

 フィデルを助けることができたら、私の能力を使って追っ手を振り払う。この国に居場所がないのなら、私がどこまでも一緒に逃げてあげる。
 出会ってから見た、フィデルのいろんな表情が私の頭の中を駆け巡った。フィデルと過ごした日を思い返しながら、私はやっと、自分の気持ちに気づいた。

 ――私、フィデルのことが、好き。

 待っててフィデル。絶対に、私があなたを救い出すから。

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