転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
繋がる想い
 兵士に捕らえられ、エリオットに地下牢に入れられてから、数時間が経過していた。

 俺はいつの間にか眠っていたようで、体の痛みで目を覚ます。こんなに冷たく、硬い床で寝たのは初めてのことだった。

 ……また、閉じ込められてしまった。今度は、こんなに寒く、暗くて、汚い場所に。

 シエラも、同じような目に遭っているのだろうか。あいつは、大丈夫なんだろうか。今も、この先も……。
 〝予知能力〟で未来を見れば、なにかわかるかもしれないと思い、俺は目を閉じた。見えるのは、暗闇の中で渦巻く残像だけ。

「……やっぱり、か」

 しばらくの間目を閉じて、俺はゆっくりと目を開ける。
 そして、気づいたのだ。ここ最近、ずっと自分自身に感じていた、違和感の正体に。

 ――俺は、能力を失っている。

 夜会の前に見た予知を最後に、俺はもう、なにも見ることができなくなっていた。
 最初は、調子が悪いだけ。久しぶりに使うから、まだ感覚を取り戻せていないだけ。そうやって、自分を誤魔化し続けていた。でもそのたびに、シエラの母親が言っていた言葉が、俺の頭の中に鳴り響いた。

『よく覚えておいて。突然生まれた力は、突然失うこともあるってことを』。

 本当に突然だ。物心ついたときから、勝手に俺に纏わりついていた不思議な力は、勝手に俺のもとから去って行った。別れの前兆さえ見せることなく。
 俺が長年使わなかったせいか、能力が俺との共存を拒んだのか……理由は、どこを探したってわかることはないだろう。
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