ごめんなさい… 忘れられない彼がいます
スキー場まで、和真さんの運転で行き、私は生まれて初めて外車に乗った。

和真さん、部長さんだからお給料いいのかな?

っていうか、和真さんって何歳なの?

「あの、和真さんって何歳なんですか?」

私が尋ねると、和真さんは嬉しそうに笑った。

「もしかして、俺に興味出てきた?」

「ち、ちがっ!
 ただ、名刺に部長さんって書いてあった
 から、若そうに見えて、実は結構
 おじさんなのかなって思ったんです!」

私はついむきになって、言わなくてもいい失礼なことまで口にしてしまった。

けれど、和真さんは、全く気にする様子もなく、ハハッと笑って、流してくれた。

「おじさんかぁ。
 おじさんだったら、やっぱり嫌?」

「え……
 嫌…ではありませんけど… 」

でも、正直、50歳とかなら引くよね。

「くくっ
 冗談だよ。32歳独身。
 菜穂(なほ)とは7つ違いだな。
 他に質問は?」

菜穂……

初めて名前で呼ばれた。

そう…だよね。期間限定とはいえ、付き合ってるんだし、彼の方が年上なんだし。

なんだかんだ話しているうちに、渋滞もなく、あっという間にスキー場に着いてしまった。

私は人見知りではないけど、決しておしゃべりでもない。

きっと和真さんが話し上手なんだ。



スキー場では、私は本当に初心者で、ほとんど滑れないから、スキースクールにでも入ろうかと思っていた。

そしたら和真さんは自由に滑れるし。

ところが、そう言ったら、和真さんは呆れたようにため息を吐いた。

「はぁ………
 菜穂、俺は今日、スキーをしにきたんじゃ
 ないんだぞ? スキーを通して、菜穂と
 仲良くなりにきたんだ。なんだって
 わざわざ菜穂をナンパ野郎の餌食に
 しなきゃいけないんだ?」

結局、和真さんは午前中、ずっと初心者向けのゲレンデで、カニ歩きで登ってはボーゲンで下りる練習に付き合ってくれた。
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