人格矯正メロディ
「汚いなぁ! ゴミ漁ってんじゃねぇよ!」


コトハの背中へ向けて罵倒と笑い声が飛ぶ。


あたしはゆっくりと立ち上がり、コトハの隣にたった。


ゴミ箱の中へ手を伸ばし文庫本を取り出す。


その時クラス内は静寂に包まれていた。


あたしがコトハを庇うとは誰も考えていなかったのだろう。


コトハも驚いた顔をこちらへ向けている。


「コトハ、本なんてやめて一緒に話しようよ」


「でも……」


コトハはあたしの取り巻きたちへ視線を向ける。


コトハが賑やかな場所が苦手なことはわかっている。


でも、一人で孤立していると状態は更に悪化して行くだけだ。


コトハだって、そのくらいのこと理解しているはずだ。


「行こうよ、ね?」


優しく言ったつもりだった。


それなのに……コトハは「嫌っ!」と叫び声を上げてあたしの手を振りはらったのだ。


あたしは唖然としてコトハを見つめる。
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