花風
正直に言えば疲れていて思考が回らず、そんな身体でマンションへと足を運んだ時。

不意に目に飛び込んでくるリビングの大きな窓、カーテンの隙間から漏れる明かりに嫌な予感を浮かべる。

それを抱えたままエレベーターへ乗り込み、丸みを帯びたボタンの４の文字に触れて部屋を目指した。

恐る恐る鍵を開けて中に入ると、リビングから僅かに人の気配を感じる。

静かに足を進め、そこに辿り着いた瞬間。

「初めまして、こんにちは！一昨日から住む事になりました緒川里乃と言います、これから宜しくお願いします」

と、なんか野暮ったそうな女の子が出てきて言い放った。

「嘘だろ……女とか聞いてないんだけど……」

確かにルームシェアの物件だと把握し、理解して暮らしてはいる。

でも、男と女を一緒に住ませるだろうか、と言う疑問に足は止まったまま。

キョトンとした女を他所に俺は次の言葉を必死に探していた。
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