花風
コンテストの疲れが全く癒えないまま、重い足取りで通勤路を進んで行く。
最寄りの駅から青山まで電車1本、微かに揺られる車内で眠気が襲ってくる。
手招くような睡魔に何とか耐え、職場に向けて歩き出す。
「おはよう」
「おはようございます!」
店内に入ると見習いの女性が掃除をしていた。
「いつもありがとう。1人?」
「あ…はい、柚月さんはまだいらしてないですね」
「そっか」
軽く会釈をして再び掃除を始める様子に少し考えに耽り、今月で2ヶ月目の新人で"咲元"と名乗ってた事を思い出し、
挨拶程度しか交わしてない無口な印象の女性を横目に仕事準備を始めた。
「おはよっす!」
店に入るなり大きな声で挨拶し、騒がしい男が向かってくる。
「…5分遅刻だぞ、柚月」
「気にすんなって!俺、準備早いし。あ、椿ちゃんおはよ!」
「おはようございます」
爽やかに笑みを浮かべて手を挙げる彼に対し、咲元さんは頭を下げつつ苦笑いしながら雑誌を整理していた。
「それにしても、惜しかったなコンテスト、まあ来年頑張れよ!」
「お…おう、普通は少し気遣うもんだけどな」
「え?気遣われたいの?」
思い切り口角を上げて問い掛ける彼に呆れ、嫌味の一つでも言おうかと考えて止める。
「そういうわけじゃないけど…まぁいいや、今日指名入ってんだろ、把握しとけよ」
「わかってるよ!」
他愛ない会話をして仕事に就き、彼なりの心遣いに心を和ませていた。
彼は物怖じせずに言ってくる事もあるが、さり気無く俺をフォローしてくれる事もあって仕事に取り組み易い。
その後、アシスタントや他のスタッフらが続々と集まって開店。
二人の指名数を比べると俺の方が少し上で彼も中々多いため今日も忙しい。
気がつけば閉店間際で、道具を整理しながら彼が声を掛けて来た。
「思ったより引きずってなさそうだな」
「お前がいつも通りだからかな」
「過ぎたことは忘れる!それが月島家のルールだからな!」
様々な面で彼には助けられている。調子に乗りそうだから本人には言わないけれど…
「そんな感じがするよ、じゃあ俺先出るわ」
「おう、お疲れ!」
「お疲れ様です!」
何故か仕事前よりも軽い足取りで帰路へ着いた。
部屋がどういう状況かも知らず。
最寄りの駅から青山まで電車1本、微かに揺られる車内で眠気が襲ってくる。
手招くような睡魔に何とか耐え、職場に向けて歩き出す。
「おはよう」
「おはようございます!」
店内に入ると見習いの女性が掃除をしていた。
「いつもありがとう。1人?」
「あ…はい、柚月さんはまだいらしてないですね」
「そっか」
軽く会釈をして再び掃除を始める様子に少し考えに耽り、今月で2ヶ月目の新人で"咲元"と名乗ってた事を思い出し、
挨拶程度しか交わしてない無口な印象の女性を横目に仕事準備を始めた。
「おはよっす!」
店に入るなり大きな声で挨拶し、騒がしい男が向かってくる。
「…5分遅刻だぞ、柚月」
「気にすんなって!俺、準備早いし。あ、椿ちゃんおはよ!」
「おはようございます」
爽やかに笑みを浮かべて手を挙げる彼に対し、咲元さんは頭を下げつつ苦笑いしながら雑誌を整理していた。
「それにしても、惜しかったなコンテスト、まあ来年頑張れよ!」
「お…おう、普通は少し気遣うもんだけどな」
「え?気遣われたいの?」
思い切り口角を上げて問い掛ける彼に呆れ、嫌味の一つでも言おうかと考えて止める。
「そういうわけじゃないけど…まぁいいや、今日指名入ってんだろ、把握しとけよ」
「わかってるよ!」
他愛ない会話をして仕事に就き、彼なりの心遣いに心を和ませていた。
彼は物怖じせずに言ってくる事もあるが、さり気無く俺をフォローしてくれる事もあって仕事に取り組み易い。
その後、アシスタントや他のスタッフらが続々と集まって開店。
二人の指名数を比べると俺の方が少し上で彼も中々多いため今日も忙しい。
気がつけば閉店間際で、道具を整理しながら彼が声を掛けて来た。
「思ったより引きずってなさそうだな」
「お前がいつも通りだからかな」
「過ぎたことは忘れる!それが月島家のルールだからな!」
様々な面で彼には助けられている。調子に乗りそうだから本人には言わないけれど…
「そんな感じがするよ、じゃあ俺先出るわ」
「おう、お疲れ!」
「お疲れ様です!」
何故か仕事前よりも軽い足取りで帰路へ着いた。
部屋がどういう状況かも知らず。