花風
「あ……また失敗しちゃった……」
フライパンから上がる白い煙りに目を凝らし、側面から表面まで焦げ付いた物体と共にシンクに入れて水を落とす。
途端に勢いの上がる煙りに咳込み、残った僅かな食材を眺めて溜息が零れ落ちる。
乱雑に皮を剥いて不揃いに切った人参と玉葱、丸いボールで灰汁を抜いたままのジャガイモ、まな板に張り付いた豚肩肉の欠片の横で銀色の包丁が鋭く光っていた。
何か少しでも感謝の気持ちにでもなればと料理をしては見たけれど、始めた結果は散々な現状と有様で手の付け場を無くして落ち込む。
「何してんの?」
不意に聞こえた怪訝な声に咄嗟に顔を向け、慌てて取り繕って言葉を吐き出す。
「ご、ごめんなさい!勝手に……使って……料理をしながら、考え事、して……」
言い訳にもならない事を口にしながら身を縮めて様子を伺うと、彼は思い切り大きな溜息を吐いて言った。
「緒川さん、だっけ……料理した事ある?
カレーなんて簡単だと思うけど、どうやったらこうなるの?」
使い掛けのカレーの箱を眺めてキッチンの状況を見回した後、彼は徐に袖を捲り上げてシンクの中のフライパンを洗い始める。
「あの、私が片付けるので……真野さんは、部屋で休んでて……下さい」
「俺より、緒川さんが休んだほうがいいと思うけど」
少し不機嫌な声に居た堪れなって口を噤み、手際よく進める姿を見てるしか無かった。
すると、ふと彼は此方を向いて一瞬だけ手を止め、再び片付けに取り掛かりながら息を吐くように語る。
「引越し来たばかりで色々あって疲れてるだろ……此処は良いから部屋に戻って」
「済みません……散らかしたままで……」
その言葉に頭を垂れるしかないまま、後ろ髪を引かれる思いでリビングから自室に足を運ぶ。
ドアに手を掛けて開いた瞬間に背後から声が聞こえた。
「今度、料理するなら俺が居る時にして、危ないから」
フライパンから上がる白い煙りに目を凝らし、側面から表面まで焦げ付いた物体と共にシンクに入れて水を落とす。
途端に勢いの上がる煙りに咳込み、残った僅かな食材を眺めて溜息が零れ落ちる。
乱雑に皮を剥いて不揃いに切った人参と玉葱、丸いボールで灰汁を抜いたままのジャガイモ、まな板に張り付いた豚肩肉の欠片の横で銀色の包丁が鋭く光っていた。
何か少しでも感謝の気持ちにでもなればと料理をしては見たけれど、始めた結果は散々な現状と有様で手の付け場を無くして落ち込む。
「何してんの?」
不意に聞こえた怪訝な声に咄嗟に顔を向け、慌てて取り繕って言葉を吐き出す。
「ご、ごめんなさい!勝手に……使って……料理をしながら、考え事、して……」
言い訳にもならない事を口にしながら身を縮めて様子を伺うと、彼は思い切り大きな溜息を吐いて言った。
「緒川さん、だっけ……料理した事ある?
カレーなんて簡単だと思うけど、どうやったらこうなるの?」
使い掛けのカレーの箱を眺めてキッチンの状況を見回した後、彼は徐に袖を捲り上げてシンクの中のフライパンを洗い始める。
「あの、私が片付けるので……真野さんは、部屋で休んでて……下さい」
「俺より、緒川さんが休んだほうがいいと思うけど」
少し不機嫌な声に居た堪れなって口を噤み、手際よく進める姿を見てるしか無かった。
すると、ふと彼は此方を向いて一瞬だけ手を止め、再び片付けに取り掛かりながら息を吐くように語る。
「引越し来たばかりで色々あって疲れてるだろ……此処は良いから部屋に戻って」
「済みません……散らかしたままで……」
その言葉に頭を垂れるしかないまま、後ろ髪を引かれる思いでリビングから自室に足を運ぶ。
ドアに手を掛けて開いた瞬間に背後から声が聞こえた。
「今度、料理するなら俺が居る時にして、危ないから」