メーティスの骸
一 秘めた過去
変わり者の寄生虫学者である宍戸玲奈(ししどれいな)の助手である浜田透(はまだとおる)は真剣な顔で目の前にいる玲奈を見つめていた。
玲奈の過去が明らかになる。そう思うと部屋の空気がいつもよりずっと重くなっていた。
「この写真の人は、本田宗一(ほんだそういち)。ずっと私の助手をしてくれていて……私の恋人だった人だ……」
普段なら「お前に恋人がいたなんて世界が滅ぶ」と透は驚いて言っていたかもしれない。しかし懐かしげに、そしてどこか苦しげに話す玲奈を見てそんな言葉は消えた。
「宗一と出会ったのは、大学に入ってすぐのことだった。同じ寄生虫について専攻することを知って、そこから少しずつ話すようになったの。彼は寄生虫の話が好きで、二人でよく話した。そして……私たちは自然と交際を始めた」
二人で寄生虫のことを学び、この研究所を譲り受けた。二人で朝から晩まで寄生虫について調べ、語り、その中に看護師の飯野美咲(いいのみさき)も加わり、三人で暮らしていた。
玲奈の過去が明らかになる。そう思うと部屋の空気がいつもよりずっと重くなっていた。
「この写真の人は、本田宗一(ほんだそういち)。ずっと私の助手をしてくれていて……私の恋人だった人だ……」
普段なら「お前に恋人がいたなんて世界が滅ぶ」と透は驚いて言っていたかもしれない。しかし懐かしげに、そしてどこか苦しげに話す玲奈を見てそんな言葉は消えた。
「宗一と出会ったのは、大学に入ってすぐのことだった。同じ寄生虫について専攻することを知って、そこから少しずつ話すようになったの。彼は寄生虫の話が好きで、二人でよく話した。そして……私たちは自然と交際を始めた」
二人で寄生虫のことを学び、この研究所を譲り受けた。二人で朝から晩まで寄生虫について調べ、語り、その中に看護師の飯野美咲(いいのみさき)も加わり、三人で暮らしていた。
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