不器用オオカミとひみつの同居生活。
プロローグ
夜のシフトはこの日が初めてだった。
バイト先の先輩からはさんざん脅されたけど、
今のところ大丈夫だ。
クレーマー、強盗、大きな蛾。
入口をじっと見張っているわけにもいかなくて、
来客を知らせるベルが鳴るたびヒヤヒヤしたけど、奇跡的にいずれもご来店していない。
『カヤちゃん、強盗が来たらこうして……こう!』
『こ、こう?』
先輩から伝授された護身術もお披露目しなくてよさそう。
私が近所にあるコンビニで求人募集を見つけたのは、もう1年以上前のこと。
社員さんをのぞけば、私はバイトの中で3番目に古株だった。
今までは日中のシフトばかりだったけど、ふいに思い立ってこの時間帯に入れてみた。