不器用オオカミとひみつの同居生活。
初めてのキス



私は昔から身体が弱くて。


病院との縁がなかなか切れなかった。


いわゆる虚弱体質。


風邪を引いたらなかなか治らなくて、
幼いころは苦労したっけ。


病は気からっていう言葉は本当なんだと思う。

あのころの私はほんとに参っていたから、余計にこじらせてしまっていたんだろう。



春休みもいよいよ大詰め。


可もなく不可もなく、
花平くんとの関係は良好だった。


あいかわらず頭の中は全然見えないけど、向こうから話しかけてくれることも増えてきた。



そんなある日、出かける準備をしていたらソファに座っていた花平くんが顔を上げた。


「なに、どっか行くの」

「ちょっと病院に。定期検診みたいな感じです」


そう答えたけど定期検診ってほどのことでもなかった。


「どこの病院?」

五十渡(いわたり)病院です」



最近では良くなってきていたから行く回数も減っていたんだけど、念のために、と。

ついでになくなっていた薬も処方してもらおう。



「じゃ、行ってきます」


返事は返ってこなかったけど、いつものことなのでかまわず家をあとにした。


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