不器用オオカミとひみつの同居生活。
町で一番大きな病院なだけあって、待合室はそれなりに混んでいた。
「わっ」
椅子に座って待っていたら、ドアップにピンク色のなにかが現れた。
その正体は、となりに座っていた女の子が持っている折り紙のツル。
「はい!これあげる!」
「こら、サチ。ごめんなさいね、娘が勝手に……」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
お母さんらしき人が大人しく座るように言うけど、女の子は聞かなかった。
むしろ怒られて、今にも泣き出してしまいそう。
私はとっさに女の子に視線をあわせて、にっこりと笑った。
「えっと、サチちゃんかな?このツル、お姉ちゃんにくれるの?」
ところどころヨレちゃっているけど、どこか愛嬌のあるピンク色のツル。
ぱあっとうれしそうに目元をゆるめたサチちゃんが、折りツルを渡してくれる。
「うんっ!さっちゃん、もういっこもってるから」
こっちはあげないよ、と見せてくれたのは金色の折り紙でつくられたツルだった。
なぜか花平くんの姿を思い浮かべてしまう。
金色だからって、ただそれだけで。