不器用オオカミとひみつの同居生活。
「お姉ちゃんは?」
「ん?」
「お姉ちゃんのおなまえはなんていうの?」
にこにこと屈託のない笑顔が向けられる。
「……私の名前は、」
そのとき、私の名前が呼ばれた。
診察室に呼ばれている。
それを聞いていた幸愛ちゃんが「わぁ!」と声を上げた。
「じゃあ、お姉ちゃん行くね。またね幸愛ちゃん。失礼します」
幸愛ちゃんにばいばいと手を振って、お母さんに頭を下げる。
診察室へ向かう途中、うしろから幸愛ちゃんの声が飛んできた。
「────お姉ちゃんもいいおなまえだね!」
私は振り返って精一杯自然に、笑顔をつくった。
「うん、ありがとう」