不器用オオカミとひみつの同居生活。
「あれ、カヤちゃんその手は?」
「あはは、さっき女の子に書いてもらったんです。幸愛ちゃん」
「へえーこれでサチちゃんか」
刈谷先生は宙でなぞるように『幸愛』と書いた。
「最近ぜんぜん見なかったけど、元気にしてた?」
「はい、おかげさまで」
「そっか。喘息も出てない?」
私はうなずいた。
そのあともいくつか質問されたり、
心臓の音や喉の奥を確認してもらったりした。
刈谷先生は私が小さいころからお世話になっている主治医の先生。
診察だけじゃなくて、いつも親身になって話を聞いてくれる。
……私の家庭事情も知っているのは、刈谷先生だけだった。