不器用オオカミとひみつの同居生活。
この時間帯は人も多いからそんなに長話もできなくて。
診察が終わったら私はお礼を言って立ち上がった。
「ごめんね、もっとゆっくり話ができたらよかったんだけど」
「いえ。刈谷先生忙しいから……また今度お茶でもしましょう」
「あはは、カヤちゃんの選ぶお店は毎回センスがいいから楽しみだなぁ」
頭を下げて扉に手をかけたとき「カヤちゃん」と呼び止められて。
「いつでも話聞くからね」
その言葉とともに、机の引きだしから取り出したお菓子を渡してくれる。
「他の人には内緒だよ」
今日は人にもらってばっかりだ。
「ありがとうございます、先生」
「お大事に。無理しないでね」
笑いかけてくれる先生の白衣が痛いくらいに眩しかった。