不器用オオカミとひみつの同居生活。


この時間帯は人も多いからそんなに長話もできなくて。

診察が終わったら私はお礼を言って立ち上がった。


「ごめんね、もっとゆっくり話ができたらよかったんだけど」


「いえ。刈谷先生忙しいから……また今度お茶でもしましょう」


「あはは、カヤちゃんの選ぶお店は毎回センスがいいから楽しみだなぁ」



頭を下げて扉に手をかけたとき「カヤちゃん」と呼び止められて。


「いつでも話聞くからね」

その言葉とともに、机の引きだしから取り出したお菓子を渡してくれる。



「他の人には内緒だよ」


今日は人にもらってばっかりだ。


「ありがとうございます、先生」

「お大事に。無理しないでね」


笑いかけてくれる先生の白衣が痛いくらいに眩しかった。


< 108 / 403 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop