不器用オオカミとひみつの同居生活。
力強く腰にまわされた腕が、私を引き寄せる。
ぐいっと乱暴に持ち上げられた顔。
ふっと私の顔にかげが落ちて、
……噛みつくようなキスをされた。
目と鼻の先にある、整った傷だらけの顔。
とつぜんの出来事に、私は目を開けっぱなしだった。
まばたきすら忘れて。
ただひたすらに目の前を見つめて。
絡み合う唇と視線。
なんでそんなに悲しそうな瞳をしているの。
……切ない声で私の名前を呼んだの。
いま、花平くんは何を思っているの?
「んっ……ぅ、」
口の端が切れてるのに。
血が滲んでいても、すこしも痛そうな様子は見せなかった。
口の中が熱くて。
ほんの短いキスが、何十秒にも感じられた。