不器用オオカミとひみつの同居生活。
卵をかき混ぜる音だけが部屋に響く。
それ以外は静かな空間で、
彼はあいかわらず喋らなかった。
ていうか二文字以上喋ったのを聞いたことがない。
「卵焼きは砂糖ですか?塩ですか?」
「どっちでもいい」
「1,2,3,4……おお…」
文字数、記録更新した。
ちょっとだけど。
迷ったあげく今日は塩にした。
少しでもお茶漬けのおかずになったらいいな。
うちに卵焼き用のフライパンはなかったから、いつものフライパンに卵を流し入れた。
じゅうじゅうと、
すぐに卵の焼ける音が聞こえてきた。
それを焦がさないようにひっくり返していく。
いつもなら多少形が崩れても気にしないけど、今回は綺麗に作れるよう頑張った。
見栄というやつなんだろう。
すこしでも料理が上手に思われたいという見栄。
冷蔵庫に何もない時点で見栄も何もないけどね。