不器用オオカミとひみつの同居生活。
すうちゃんに電話してみようかなってスマホを覗けば、時刻はもう午後11時近くて。
さすがに電話するには遅い時間だ。
ましてや病人なんだから、とそっとスマホを机の上に置いた。
ふと思いたって、露天風呂に入りにいくことにした。
暗くなってからはまだ行ってなかったから、この合間に行っちゃおう。
こっちゃんも戻ってきたら来るだろうと思って、
『露天風呂に行ってきます』とメモ書きを残して部屋を出る。
露天風呂までの道のりでは誰にも会わなかった。
夜も遅いからみんな寝てるのかなぁ。
きょろきょろと周りを確認してしまう。
こっちゃん、花平くんと会えたのかな。
ひとりでとぼとぼ歩いていると、なんだか惨めったらしく思えてきて。
ネガティブな考えを打ち払うように頬を叩いた。
「だめ、もう考えないようにしよう」
脱衣所にいるとき、そとから聞こえた女性の声。
入ってくるのかな?って思ったけど、どうやら外にいるだけみたい。
「あぶない!替え忘れてたわー。こんな時間だし、もう誰もいないわよね?」
すでに脱衣所から離れていた私は、そんな言葉に気付くはずもなかった。