不器用オオカミとひみつの同居生活。


「メシがあったけぇ」


癇癪を起こすわけでもなく、ただそう一言述べただけだったから。


身構えていた私はきょとんとしてしまった。


お茶漬けがあったかいのは当然なのに。

なんで驚いてるんだろう。


ともあれ卵焼きは食べていいみたいだから、すでにつまんでいたそれを口の中に入れた。


塩とだしを使ったふかふかの卵焼き。


うん、やっぱりお茶漬けにはこっちのほうが合う。



味がどうかは聞かなかった。

……けど。


もくもくと食べ進めている彼を見るかぎり、口に合わなかったことはなかったなって。



食事中はお互いに無言で、でも息苦しいわけじゃなかった。

心地良いとまでは思わないけど、とくに気になるわけでもない。



食べ終わったのはほとんど同時だった。


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