不器用オオカミとひみつの同居生活。
夜の露天風呂には誰もいなくて、まさかの貸し切り状態だった。
昼間の光景とはまた違って、温泉街の灯りがきらきらと広がっている。
端のほうまで移動して、ふちにそっともたれかかった。
腕を組んで、そのうえにあごを乗せる。
石が冷たくて、お湯はあったかくて。
なんだか贅沢な気分になりながら街道を見下ろす。
「きれー……」
朱色、橙色、……蜂蜜色。
花平くんの色だってのんきに思って、小さく笑う。
前までは全然気にもとめなかったのに。
いまではすっかりこの色が目につくようになってしまった。
私、どちらかといえば寒色系のほうが好きだったんだけどな。
町を歩いているとき、買い物をしているとき。
気が付けば探してしまっている自分がいて。
見つけたときには嬉しくなって、幸せな気持ちになる。
「……赤の他人、か」