不器用オオカミとひみつの同居生活。
なにやらキゲンの悪そうな花平くんは、私を横目で見ただけだった。
お前に用はないって言われているように、視線をはずされる。
その視線の先にいたのは、周くん。
……なんだろう、この空気は。
体感では長く感じたけど、たぶんほんの数秒。
周くんが沈黙を破った。
「久しぶり、花平。高校で会うのは初めてだな」
「……加瀬沢」
花平くんが。
人の名前を覚えないことに定評のある、あの花平くんが。
周くんのことを加瀬沢って呼んだ。
「あの、ふたりって……」
「ああ……同じ中学出身。だよな?」
確認するように周くんが視線を向けたけど、花平くんは無言のまま。
理由はわからないけど、最初からずっと苛ついてるようだった。
ふたたび、花平くんと目が合う。
「お前、」
何かを言う前に、ピタリと動きを止めて後ろを振り返った。
かと思えば盛大に舌打ちをするから。