不器用オオカミとひみつの同居生活。
言った瞬間、なぜか空気が一気に張り詰めたような気がした。
さっと若干の冷気を感じるのは、きっと気のせいじゃない。
無表情の花平くんからあとずさるように身を引いたけど、すぐ後ろは壁。
花平くんがすっと右手をかざした。
殴られるかと思ったけど、どこも殴られることはなく、顔を無理やり上げられた。
「茅森」
「な、なにす……」
「昨日なんで加瀬沢といたんだよ」
「そんなの花平くんには関係ないでしょ」
「しかもお前、なんか顔赤かったし」
「あ、それは……」
のぼせてたから赤く見えたんだ。
だけどそれを説明するには、経緯も話さなくちゃいけなくて。
言ったら呆れられるどころか幻滅されてしまう。
「えっと、その、あれは────」
「……むかつく」
ただひとこと、『むかつく』と言われ。
そんな言葉には似つかわしくない行動に、頭が追いつかなかった。
この人は私の腕を引っ張るのが好きらしい。
ぐっと花平くんのほうに引かれて、すぐ目の前に顔があって。
私は花平くんにキスをされていた。