不器用オオカミとひみつの同居生活。
「へーき」
その言葉からは何の抑揚も感じられない。
ポーカーフェイスという言葉があるけど、この人はポーカーフェイスみたいに自分の気持ちを隠しているわけじゃないと思った。
本当になんとも思ってないんだ。
痛いとも思ってないから、表情も変わらない。
こんなとき普通の女の子だったら、何か気の利いた言葉の一つや二つかけてあげられるんだろうけど。
私はなんて声をかけたらいいのかわからなくて、黙り込んでしまった。
どうしようなんて思いながら顔の手当てに移る。
目の横のあざはさっきよりも痛々しく変色していた。
頬に伸びている切り傷は、ニキビ一つない肌で存在感を増している。
コンビニで見たときより、テーブル越しで見たときより。
目と鼻の先にある顔は傷だらけで────
「……もったいない」
意識するより先に、
そんな言葉が口をついて出た。