不器用オオカミとひみつの同居生活。
あ、やばい。
なんだろう、本能がやばいって騒いでる。
とっさに理由を考えて、花平くんから距離をとった。
「待たせちゃってすみません」
そうだ、雨も降ってきてるんだしはやく食べなきゃ。
「すぐに食べ終わるん──でッ!?」
だけどにゅっと伸ばされた手が、私のほおを掴んで離さない。
「あの、首がちょっと……」
無理やり花平くんのほうに向けられてる。
ぐっと顔が近づけられて、思わず掬っていたかき氷が落ちそうになった。
ま、またキスされる……!?
目を閉じても、いつまで経っても何もされなくて。
おそるおそる目を開けると、待っていたかのように花平くんがべっと舌を出した。
その舌は……私と同じ色に染まっていた。
「あんま人前でこーゆーことすんなよ」
「えっ、なんで……」
「バカ面だから」
舌の色見せただけでそんなこと言われるの?
「花平くんもしてたのに」
むっとしてスプーンに目をやったら、上に乗っていたかき氷がなくなっていた。
そうか、花平くんはこれを食べたんだ。