不器用オオカミとひみつの同居生活。


授業中、カバンに入れていた写真をそっと取り出した。


いつ撮られていたのかもわからなかった。


映っているのは、花平くんと私。


それも、ほんの昨日撮られた写真だった。

お祭りでかき氷を食べていたとき。


顔を掴まれている私に、花平くんの顔が重なっているように見えた。


……まるで私たちがキスをしているように。



傘で隠れていてはっきりとは映ってなかったから、この写真を見ただけじゃ勘違いしてしまうそうだった。


実際は寸止めで、もちろんキスなんてされてない。



もう一つ、くつばこに入っていたメッセージ。


筆跡がわからないように細工されていて、これを送ってきた人物の性別すらわからなかった。


でも、たぶん。



「……女の子、だろうな」


花平くんに興味を持っている女の子は少なくはなかった。


もしかしたらこっちゃんのように、花平くんのことが好きな人だっているんだろう。


もし、その子が昨日のような場面を見ていたとしたら……



手元のメッセージに目を落とす。



『花平綾人に近づくな』


無機質なひとことに、背筋がすうっと寒くなったような気がした。



一体、誰が?


< 192 / 403 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop