不器用オオカミとひみつの同居生活。
授業中、カバンに入れていた写真をそっと取り出した。
いつ撮られていたのかもわからなかった。
映っているのは、花平くんと私。
それも、ほんの昨日撮られた写真だった。
お祭りでかき氷を食べていたとき。
顔を掴まれている私に、花平くんの顔が重なっているように見えた。
……まるで私たちがキスをしているように。
傘で隠れていてはっきりとは映ってなかったから、この写真を見ただけじゃ勘違いしてしまうそうだった。
実際は寸止めで、もちろんキスなんてされてない。
もう一つ、くつばこに入っていたメッセージ。
筆跡がわからないように細工されていて、これを送ってきた人物の性別すらわからなかった。
でも、たぶん。
「……女の子、だろうな」
花平くんに興味を持っている女の子は少なくはなかった。
もしかしたらこっちゃんのように、花平くんのことが好きな人だっているんだろう。
もし、その子が昨日のような場面を見ていたとしたら……
手元のメッセージに目を落とす。
『花平綾人に近づくな』
無機質なひとことに、背筋がすうっと寒くなったような気がした。
一体、誰が?