不器用オオカミとひみつの同居生活。












すっかり遅くなっちゃった。


委員会が終わったとき、すでに空は茜色に染まりはじめていた。

誰もいない廊下をひかえめに走る。


つい先ほど教室に荷物を取りに行けば、私が最後の1人だったから。

施錠をして職員室にカギを返しに行ったところだった。



1年も在校していれば、どのルートが近道かもおのずと分かってくる。


私がいま通っている場所は、人通りもすくなくてちょっと不気味だから、急いでいるとき以外はあまり通らない。


だけどこの日は急いでいたから、そんなことも気にならなくて。



「一応、遅くなるって連絡しておこうかな」


一度立ち止まって、花平くんにメッセージを入れようとしたときだった。






「カヤちゃん」


まるで鈴を転がすような、涼しい声が聞こえた。


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